1995.12 読売新聞社・刊 ¥1,400 06.4.8 読了
1888年、イギリス・サフォーク州の牧師館の娘として生まれたウイニフレッド・ビーチがレディ・フォーテスキューになるまでの自伝的著作。
広大な原始林と原野、畑に囲まれた牧師館で、伸び伸びと自然児として育った著者は、17才で女優の道を選ぶが、それは兄をオックスフォードに進学させる学費が家にはなさそうだと思ったからだった。
女優生活を送っているある運命的な日、
トーマス・ハーディ邸のパーティで、未来の夫、ジョン・フォーテスキューと出会い、3年間の交際を経て、めでたく結婚に至るのだが、彼女はかなり小さいときから、結婚したい男性のイメージを作り上げていた!名前は何故かジョン。その人は、背が高く、やせていて、しなやかな手に、耳は大きくないこと、そして職業は作家。
ジョンは英王室の信頼厚いライブラリアンで、先代の国王の時代から、ウインザー城の膨大な蔵書を管理・監督する一方で、イギリス陸軍の歴史を執筆していた。仕事場はウインザー城の一室にもあった。
これは、ジョン、ウイニフレッド夫婦の麗しい愛の軌跡とも言える。
二人には30才の年齢差があったが、結婚してから次々と持ち上がる事件や困難を夫婦が力を合わせて克服していく過程に多くのページが割かれている。
なかでも、インテリア・デコレーター兼ファッションデザイナーとして店を開き大成功させて、夫に後顧の憂い無く執筆活動に専念させた内助の功は、見事と言うしかない。
国王から声を掛けられ、王妃を自宅に迎えてもてなしするような境遇になったが、彼女の頭にあるのは、夫の執筆の手助けをしたいという一念のみだった。そのためなら、商売でもなんでもいたします、と古風で健気な女房に徹するのだ。
36年間に亘ってイギリス陸軍の歴史を執筆・上梓して来たジョンはついに、それを完結させることが出来た。
そして勲爵士の称号を受け、著者もレディ・フォーテスキューの尊称を受けることになった。
ジョンが執筆した「歴史」13巻は、妻に献げられた。